| Main | All |
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告 | | Top ↑
Re:創成者の街 第一話 記憶の鍵 その3
『うわあああああああ!』
 創介とトトが今までにないくらい取り乱しながら叫ぶ。
「な、なな、なんだ!?何が起きたんだよ!?」
 思わず俺は衝撃を受けた頭部に手が触れる。その行動が、あまりに無用心で、無防備な行動であったことに気づく。
 触れた手には、人体では考えられない感触があったのだ。例えて言うなら、金属のような硬さが……。金属?
 おいおい、ちょっと待て、さっき創介の手にあったものはなんだったんだ?確か鍵のようなものの破片があった筈で……。
「あのー、取り乱しているところ失礼しますがー」
 俺の言葉で、一瞬で空気が凍った。まるでポンコツロボットのように不自然に、ぎこちなく首だけが俺に向いた。
「あの、まさか、創介の手に持っているそれ。いったい何でしょうか……?」
 俺に指摘されると同時に創介の手が背中へと隠れる。
「なんか頭に刺さっているような感触があるんだけど、疑うつもりはないよ!もちろんそんな気はさらさらないけどさぁ、もしかして、それって何かの鍵なのかな?」
 無言、無反応、そして首筋には光る汗。
「万が一、万が一だよ。まさか自分から記憶を戻すことができるって言ってくれた創介さんがそんな失態をするなんて思いもしないんだけどさぁ。その鍵が、回している最中に折れちゃった、なんてこと、……ないよね?」
 またもや無言。頭の中で無尽蔵に嘘だろと連呼しながら、俺は創介の頬に沿う汗を見つめていた。その汗が床に落ちた瞬間、俺の中で何かが切れた。
「うわあああああああ!」


「お、落ち着いた……?」
「落ち着けるわけないだろ、こんなことになって……」
 恐る恐る尋ねる創介に、ぶっきらぼうに応答する。
 どうやら、俺の予想はあたっているようで、創介が俺の記憶の中に入る際になにやら鍵を刺さなくてはならないらしいが、よくわからない力が働いているおかげで俺が認識している、『刺す』ではなく、痛みもなければ出血もない。
 それだけなら全く問題ないのだが、鍵が途中で折れてしまったため創介が俺の記憶の世界に入ることができなくなり、俺の記憶を元に戻すこともできなくなってしまった。
 つまりは、元の世界へ帰る希望が、完全に絶たれてしまったわけだ。
「ぼ、僕もこんなこと初めてで、鍵を創ることはできても、どうやって修復すればいいかわからないんだ」
「それは何度も聞きましたよ。でもどうすりゃいいんだ……」
 頭を抱えると鍵が指先に触れてしまうため、俺はただうなだれるだけにしておいた。
「でも、鍵が少しばかり回っているから、もしかしたらちょっとした拍子で記憶が漏れ出してくることがあるかもしれないよ。そうしたらさ、ほしかった記憶が不意に思い出せるかもしれない!」
 あくまで推定なんだよな。創介さんよ……。
 例えて言うなら音楽のクレシェンドのように上がり調子で空元気を出す創介にただただあきれるばかりだった。
 おまけに、目の前の黒い塊は俺の気なんて全く考える余地もなく言う。
「まあさ、俺らは元からお前をここに泊めるつもりだったから、別段気にすることはないんじゃねえのか?これといった特徴もないお前にも興味を示してくれる輩なんぞうじゃうじゃいるだろうし、この街も悪くはない、てか暮らしやすいと思うぜ」
 トトの言動に軽くイラっとするが、いちいち怒る気にもなれない。俺は静かに呟く。
「このままこの最悪の状況を受け入れろとでもいうのかぁ?」
「わざわざ受け入れなくたっていいだろ。それ以外に方法なんざ無いんだからさ」
「お前は他人事だからいいよな……」

 こうしている間にも時間が過ぎていく。外はすっかり夜へと変貌を遂げ、街の灯りも生活音と同様に次第に消えていく。
 人生は選択の連続だなんてよく言ったものだが、どうやら俺にはその選択肢すら与えられなかったみたいだった。

Re:創成者の街 | comment 0 | trackback 0 Top ↑

Comment

Write Comment







  Only to a master?

Trackback

| Main | All |

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。