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Re:創成者の街 第二話 稲妻の叫び その2
「やあ、久しぶりだな。瀬野君」
 いつも通りのシマウマヘアーの創介と、替えの服がなく、仕方なしに創介のおさがり(白Yシャツ&黒ズボンの学生夏スタイル)を着ている俺と、瞳と体の見分けがつかないほどの漆黒のカラス、トトの二人と一羽が朝食のパンをかじろうとしたところで、Tシャツにホットパンツの雷少女、雷華が顔を出してきた。
 彼女の声が響いた瞬間、二人と一匹は一瞬だけ間が開いた。
「久しぶりって、昨日会ったばかりだろ」
 君付けで呼ばれることにむず痒い思いをしながら、俺は食事の手を再開して言った。
「いや、いいじゃないか。久しぶりと言えるのはそれだけ相手と会うのが待ち遠しかったということなんだぞ」
「どういうことなのかさっぱりわからんな」
 トトが吐き捨てる。
「そう固いことを気にするな。私だってよくわかっていない」
 じゃあなおさら駄目なんじゃないのか。
「それで、今日は何の用事でここに来たんだい?」
「そう言われれば、私は創介さんに用事があってきたのだったな」
 そういってそそくさと創介の隣に遠慮なく、朝食の真っ最中だというのにずうずうしく座る。
 創介には、さん付けなのか。
 俺にはよくわからない横文字を使いながら込み入ったような会話をしている雷華をみて、俺はそう思った。
「なんだ、気になるのか?青春真っ只中の少年よ」
「………」
 トトが、まるで俺の思考に割って入ってくるように、自然と俺を邪魔してきた。
「ほっといてくれ。届かない願いなんてあってないようなもんだしよ」
「なんだ、意気地なしだな。ビビりか?」
 そこであえてチキンと言わないあたり、割と言葉を選んで使っているように思える。
「関係性が壊れてギクシャクなるよりはましだって言ってんだ。第一昨日今日であった相手に気楽に話せるかよ」
「あー駄目だね。実によくない。第一お前は恋愛についてわかっているつもりなのか?そんな逃げ腰で女の尻をとらえられるとでも思っているのか?」
 そういうお前はおっさんかよ。
「変な言い回しはやめろ。誤解されかねないだろうが」
「この際気にすることじゃねえよ。物事ってのはすべてに個人的な優先順位がついてるってもんだ。今のお前の優先するべきことナンバーワンは雷華と付き合うことだ」
「あのなぁ、からかってるんだったら本気でやめろよ。関係のないことで相手を困らせるだろ」
「あらまぁ、お優しいのね真人ちゃんは」
 いっぺん蒸してローストチキンにしてやろうか。
 数秒の間、頭の中で個人的かつ内密に、徹底的な議論を交わした挙句、異臭で誰も食べようとしないだろうとのことで却下された。
「そもそもだなぁ。あんなに攻撃的で無邪気な女もそうそういないぜ?狙うなら今だろ」
「知るか」
 トトの言葉を一蹴し、
「攻撃的な性格が魅力の一つに加わると思う時点で、お前はズレてるんだよ」
 吐き捨てるように俺は言った。それで話を終わらせたかった。そこからトトがしゃべろうとも、俺は無視を徹底して貫くつもりだった。
「おとなしいメスに魅力は感じねえよ」
「人間をメスとか言うな」
 無理だった。
 ただ、このままトトに攻撃を加えられないのも癪なのもので、一発だけぶちかましてやりたくなった。
「カラスが人間の恋愛なんか語れっこないだろうに」
 トトの目蓋がピクリと動いた。これはいいジャブを効かせられたみたいだ。
「あのな――」
「『恋愛』の話なら私も混ぜてくれ」
 一瞬の間。それは雷華が家に訪れた時と同様の間、と言うよりは雷華が話に割って入ってきたのだが。
「な、なな、なんだよ急に」
 俺の顔から三十センチも無いくらいの位置に女の子、もとい雷華が急に現れたことと、先ほどまで雷華について話していたことが交差して、今まで以上に胸の鼓動が急速に脈を打つ。妙な冷や汗まで掻き始めた。
「いやあ、『恋愛』という言葉が聞こえたのでな。これは是非とも私が参加するべき会話だと思ってお邪魔させてもらった次第だ。こう見えても私は立派な女の子を満喫しているのだぞ。相談ごとであったら受け付けている。ほら、続けてくれ」
 恋愛相談なんかお前にやったら滅茶苦茶になるだろうが!いや、それ以前にそもそもの話の焦点が雷華なわけで、それをお前に話すとそれはそれで妙なことになるわけで、恋愛経験云々以前に雷華自身が変な対応をしかねないし、もしかしたら頬を赤らめてくれるとか――いやいやいや、何を考えてるんだ俺は。と、とりあえず何か言わなくちゃ。話を進めないと目の前の馬鹿ガラスがとんでもない爆弾を落としかねない。
 なんて頭の中で思考をめぐらしながら、自分でノリ突込みをしつつ何とか言葉を絞り出す。
「そ、そーいえば、創介に何か用事があったんじゃないのか?」
「ああ、その件ならもう終わったよ」
「………」
 会話が終わったじゃないか!どーしてくれんだよ!
 な、なにか、何か考えろ。話を逸らさないとえらいことになる。ってああ!あの糞カラス、こっちを見てにやにやしてんじゃねえか。おいちょっとやめろ、口を開くんじゃ……。
「さっきな、俺たちでお前のことが――」
「うわああああああ!!!」
 何を思ったのか、ついに俺の中の頭が暴走を始め、大声でトトの言葉を掻き消すとともに、その場から逃げ出すように店を飛び出した。それはもう、ネズミを見つけた某猫型機械のように、上司に悪巧みが見つかった某駐在のように。
「真人~まだ朝ご飯の途中……」
 後ろのほうで創介のそんなのんきな声が聞こえたが、構ってられるほど俺の脳内回路のキャパシティがなかった。


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